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2026-07-03 00:38:05 +09:00

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https://wired.jp/article/whole-earth-catalog-now-online-internet-archive/ 2026-07-01 96fccf3585fbced43827f9b337fac7dc3aad71a2057e0b9deaf556c2cb86b617
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カウンターカルチャーを象徴する人物スチュアート・ブランド。そんな彼が手がけたほぼすべてのカタログや雑誌が、ネット上で初めて閲覧できるようになった。そのなかには55年前に創刊した『WHOLE EARTH CATALOG(WEC)』も含まれている。過去に刊行されたカタログや雑誌、ジャーナルをブラウザーからすべて読んで、ダウンロードできるようになっている。

『WEC』は、当たり前を疑い自由に生きるためのレビューやハウツーガイド、入門書などが誌面に詰め込まれたブログの原型と言えるものだった。「Access to Tools(ツールへのアクセス)」というタグラインを掲げた『WEC』は、ノウハウや製品レビュー、文化的分析、そして社会に対する大量の皮肉を、インターネットが隆盛する前に提供していたのだ。

1960年代に刊行されていた当時、『WEC』はテクノロジー楽観主義者(テクノオプティミスト)や、都市生活と消費社会を捨て田舎で生活をしていたヒッピーたちの道しるべとなっていた。そして、目を覚まし、波長を合わせ、社会から距離を置いたベビーブーマー世代の若者が自立する方法を説き、小屋や納屋、ジオデシック・ドームの建て方を教えている。これは、ベビーブーマー世代が一軒家を購入できるほどの金をもつ前の時代の話だ。

このカタログはシリコンバレーの価値観にも大きな影響を与えており、現在のスタートアップ文化を支えるアイデアの種をまいたと言われている。スティーブ・ジョブズが2005年のスタンフォード大学の卒業式スピーチで 『WEC』について言及し 、グーグルが存在する前のグーグルに例えたのは有名な話だ。このカタログのライターのなかには、 「The WELL」 のようなオンラインコミュニティを立ち上げたり、自ら雑誌や書籍を手がけたりする人もいた。『WIRED』編集部に加わった人もいる。

待ち望んでいたデジタルコレクション

サンフランシスコのアートコレクティブ 「Gray Area」 のエグゼクティブディレクターを務めるバリー・スルーは、文化団体 「ロング・ナウ協会」 と、過去のさまざまなメディアのデータを収録しているサイト 「Internet Archive」 と共同で、修復プロジェクトを指揮している。

数千ページにも及ぶ『WEC』のバックナンバーをデジタル化する作業を引き受けたのは、過去の雑誌記事を見つけようとして見つけられず、いらだちを覚えたことがきっかけだったと、スルーは言う。

「公開されていないだけで、非常に重要なコンテンツがたくさんあることに気づいたのです」と、スルーは語る。「データとしてスキャンして残されておらず、探していた雑誌はほぼ入手不可能でした。なので、スチュアートが生きている間に、このプロジェクトを始めることに意義があると思ったのです」

Portrait of American author and Whole Earth Catalog editor Stewart Brand

Portrait of American author and Whole Earth Catalog editor Stewart Brand

84歳のスチュアート・ブランドは、60年代のヒッピームーブメントと、70〜80年代のコンピューター革命の橋渡しをしたことで知られる作家だ。過去数年の間にも、 伝記 と ドキュメンタリー映画 が公開された。ブランドは、宇宙から撮影された地球の写真を公開するよう政府を説得したことで、とりわけ知られている。

彼は、技術と知識を共有する手段として、その象徴的な画像を表紙にあしらった『WHOLE EARTH CATALOG』を創刊した。発行されていた期間は短く、1968〜71年にかけて年に数回発行されていた。その後は98年まで復刻版が発行され続け、そのころには『WHOLE EARTH』から派生したさまざまな関連出版物が発行されていた。72年には、『The Last Whole Earth Catalog』は全米図書賞を 受賞している 。

「70年代に発表していた『WEC』は、主体性を人々に与えることを目的としていました」と、ブランドは言う。「読者たちは、興味をもたない受動的な人から、能動的に動いてさまざまなことに興味をもつ人へと変わっていったのです。(カタログに記載された)それぞれのレビューは、『若いうちに何かやっておかなくては』と思わせてくれる、少しだけ開かれたドアのようなものでした。そして、多くの人がその扉を通っていったのです」

テック業界や社会、現代文明に与えた影響の大きさにもかかわらず、『WEC』とその関連出版物はこの数十年間、入手しづらい状況が続いていた。最後に発行された『WHOLE EARTH REVIEW』は、2002年に負債を抱えて倒産したからだ。

編集者たちはその後ほかのプロジェクトに移り、過去に印刷された雑誌は放置されたままとなった。『WHOLE EARTH』の出版物をすべてデジタル化したいという申し出はあったが、結局デジタルアーカイブは完成しなかった。デジタル化されたものの大半は閲覧できなかったのだとブランドは語る。

「いろいろな人が『WEC』のアーカイブを使ってさまざまなことをやりたいと言ってきたのですが、返事が返してくれない人を紹介してきたのです」と、ブランドは言う。「それで何十年もの間、ただイライラさせられていました」

『WHOLE EARTH』シリーズの“決定版”がここに

スルーによると、『WHOLE EARTH』シリーズの50周年を祝う18年のイベントで、すべての出版物を1カ所に集めるという考えが浸透したという。最終的にスルーは、入手可能な『WHOLE EARTH』シリーズのカタログや雑誌、書籍をデジタル化し、教育、研究、知の共有を目的として公開するというアイデアを提案した。

「何年も前にやっておきたかったですね」と、ブランドは語る。「わたしたちは、ずっと『WEC』を無料で公開したいと思っていました。そして、わたしたちが許可するだけでネット上にこれらの出版物を載せられるという選択肢が提示されたとき、編集部はみんな『ぜひ』と言いましたね。そしてスルーのチームが実現してくれたのです。膨大な量のカタログをようやく世に送り出せました。ただただうれしいですね」

『WHOLE EARTH CATALOG』の“決定版”がオンライン無料公開──復活の意義は「読者が決める」

『WHOLE EARTH CATALOG』の“決定版”がオンライン無料公開──復活の意義は「読者が決める」

データ化されたカタログを集めたサイトはInternet Archiveによってホストされており、ウェブサイト 「wholeearth.info」 は、デジタル化された各雑誌へのリンクと、その説明をしているランディングページとして運営されている。

雑誌やカタログはページごとに閲覧することができるほかにも、本のようにページを並べて閲覧することも可能だ。各号はPDFでダウンロードできる。

このウェブサイトには、『WEC』のあとを継いで発行された『CoEVOLUTION QUARTERLY』や『WHOLE EARTH REVIEW』そして『WHOLE EARTH SOFTWARE REVIEW』が含まれている。

ウェブサイトに収録されている出版物は数千ページにも及び、半世紀以上にわたって紙のまま保管されていたが、このたびデータ化され、高解像度のフォーマットで公開された。『WHOLE EARTH』シリーズをデータ化しようとした過去の試みは、ウェブ上に数キロビット分のデータを散在させただけで終わっている。

いまは閉鎖されているウェブサイト「WholeEarth.com」は技術的な問題をいくつか抱えており、Internet Archiveも『WHOLE EARTH』シリーズをいくつか同サイト上に 掲載し 、いくつかのカタログはニューヨーク近代美術館によって データ化されていた 。しかし、スルーの努力の結果、『WEC』とそのあとに続いた雑誌は1カ所に集約されてネット上で公開されたのだ。

このコレクションは、アルバム、シングル、B面、輸入版EPがすべてリマスターされ、ネット上で閲覧できるように再パッケージ化された、ロックバンドの決定版ボックスセットだと考えてほしい。

一部の出版物は時間の経過とともに失われてしまった。このウェブサイトには、『WEC』の創刊号など、いくつかの出版物は収録されていない。スルーによると、創刊号に掲載されたものの多くがその後の号で補完されていることを考えれば、こうした抜けは取るに足りないという。とはいえ、いずれはすべての号が収録される予定だ。

数十年を経ても不気味なほど適切

『WEC』が発行されてから数十年が経つが、自然環境への配慮と技術進歩への渇望が入り交じったこの出版物は、超オンライン化が進み環境に配慮するようになった現代において、不気味なほど適切であると感じられる。

長年にわたりこの出版物は、科学や社会正義、セクシュアリティ、バイオテクノロジー、地政学などのトピックを取り上げてきた。環境問題への関心の多くは、当時と同様にいまでも際立っている。

リチャード・ブランドと編集部員が1971年にカタログを制作している様子。

リチャード・ブランドと編集部員が1971年にカタログを制作している様子。

「『WEC』で30年前に議論していた内容が、いまも解決されていないことに驚きを感じると同時に、ショックを受けてしまいます」と、スルーは語る。「何というか、人類はそこまで進歩していないんだなというか。ただ“加速しただけ”なのだと感じますね」

『WHOLE EARTH』シリーズを畳んでからブランドは、より複雑で時に物議醸すものを題材としたプロジェクトに取り組んでいる。例えば、原子力発電の啓蒙活動や「1万年時計」の建設支援のほかにも、研究者とともにアメリカグリの木やケナガマンモスといった絶滅した種を生き返らそうとしているのだ。『WEC』の復活がどんな影響を及ぼすかは読者次第だとブランドは言う。